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カストリ雑誌新世界 チラ見せ

 金曜日が決戦、みたいな話を聞き、新世界の原稿の一部を急遽公開することにしました。著者の方とは相談済みです。ではどうぞ。

大麻使用罪で全員逮捕!
~行政の無知が生み出すディストピア~

 昨今話題のニュース、大麻使用罪の創設。違法薬物の取り締まりを強化するために検討されているこの法律が、ある大惨事を引き起こすかもしれません。
 本誌では大麻使用罪が生み出す泥沼社会の可能性について、まだどのメディアでも取り上げられていない過激な切り口から指摘します。

大麻使用罪って何?

 この本が売り出される頃には可否が決まっているかもしれませんが、近頃「大麻使用罪」と呼ばれる法律を新しく作るかについての有識者会議が開かれています。
 この大麻使用罪は、文字通り「大麻を使用した罪」を指しています。それまで大麻の所持・売買・使用の幇助(手助けする事)や教唆(そそのかす事)については罪に問われたものの、肝心の大麻の使用についてはそれを罰する法律がありませんでした。
 その理由の一つとして、大麻は現代日本でも日常的に使用されているからという事が挙げられます。
  大麻と聞くと真っ先に違法薬物が頭に浮かぶかもしれませんが、意外と皆さんお馴染みの物に使われていまして、例えば七味に含まれる麻の実は大麻草の実そのものです。よほど辛い物が苦手でない限り、誰しも一度は七味を使った事があるでしょうから、つまり私達日本人はほぼ全員、一度は大麻を食べた事があるのです。
 しかし、そこで使われる大麻草の種子は違法とされる成分「THC(テトラヒドロカンナビノール)」がほとんど入っておらず、適量食べたりする程度では薬物としての効果は全くありません。更に言えば、上記の理由により大麻草の茎や種子については所持や売買に対する罰則が設けられていません。ですので、七味唐辛子をいくら食べても売ってもパトカーに囲まれるような事にはなりませんのでご安心ください。
 またその他にも、横綱力士の締める綱や、神社が祭祀を行う際に使用する大幣など、日本の伝統文化に大麻草が使われるシーンも未だに数多く残っています。

不可避の「high」とうっかりTHC

 しかし、それら「合法的大麻製品」を作るために、政府の承認を得て大麻草を栽培している「合法的な大麻農家」は、大麻草を収穫する際にその樹液に晒されてしまい、結果大麻を使用した時と似たような「麻酔い」という状態を起こしてしまいます。
 また、先程「茎や種子の部分は違法成分THCがほとんど入っていない」と書きましたが、完全に0%という訳ではなく、大量に食べた場合は大麻の陽性反応が出てしまう可能性もゼロとは言い切れません。
  故に大麻の使用を禁ずるとなると、これら農家の方々が作物の収穫をする度に逮捕されたり、七味を食べ過ぎた罪で逮捕されたりするカオスなコメディが発生するおそれがある事から、今まで大麻の使用についての罰則は設けられていませんでした。
 しかしこの度、若者の大麻所持による逮捕が相次いだ事もあり、大麻の使用に関しても罰則を作ろうという動きが起こり、専門家からは疑念の、そして一部市民からは大ブーイングの声が寄せられまくっています。

違法成分THCと合法成分CBD

 さて、上記ではクソ真面目な説明をしましたが、要はひょっとしたらこの先「コイツ大麻使ったやろ!」と警察から疑われたら捕まる事になるわけで、そしてその証拠はおそらく尿検査によるTHC、もしくはTHC代謝産物(体の中でTHCが分解されて出来る物質)の有無になるかと思われます。

 ……けれど、すげぇぶっちゃけた話、このTHCって合法成分から作れるんですよね。

 これを読んでいる貴方ならご存じかもしれませんが、大麻草には違法成分であるTHCとは別に、CBD(カンナビジオール)という成分が含まれています。
 このCBDは日本でも合法で、世界保健機関(WHO)の記した「カンナビジオール(CBD)事前審査報告書」によると、依存に繋がるような作用を示さず、安全性、忍容性が認められています。その上で、てんかんや社交不安障害などに効果があるとの研究があり、またアメリカでは「抗酸化作用、神経保護物質」として特許も取られている、人類にとって物凄く役立つ物質なのです。
 CBDはここ数年で流行の兆しを見せており、最近では電子タバコショップや大型雑貨店でもCBDを使用した商品を見かけるようになってきました。またこの成分は医薬品扱いをされていないため、個人間でのCBD製品の売買も割と自由に行われています。

 ところでこのCBDですが、実はとある条件で容易にTHCに変換してしまいます。
 具体的な方法は書いた瞬間発禁になるので控えるのですが、しかしこの条件は先の「カンナビジオール(CBD)事前審査報告書」によれば、人体のとある場所にとても良く似た性質をしており、実際にその部位の体液に模して作った人工液にCBDを長時間漬けると微量のTHCが検出されたという研究も併記されています。
  とは言え、これはあくまで「人工液にありえない程長時間漬けたらこうなった」という話であり、またとある研究では「CBD製品を毎日大量に摂取しても尿中からTHCは見つからなかった」という結果も出ています。
 ですので、もし大量のCBDを摂取したとしても尿中にTHCが出てくる可能性は限りなく低いのですが、あくまで「実験として」、CBDからTHCを作る事は、かなり容易に出来てしまうのです。

気になるあの子を捕まえよう!(法的に)

  摂取したCBDが体内でTHCに変わり尿から出る可能性はほぼゼロに近いのですが、しかしもし人工液に漬けるなどの方法で意図的にTHCへの変換が行われ、それが誰かの口に入ってしまった場合、その人に食べた認識があろうと無かろうと、尿からTHCが出てくる確率は爆上がりします。
  そうなると、本人の意思に関わらず「使用罪成立条件:尿中THC陽性」を満たしてしまい、ここでおまわりさんが来て使用を疑われると、実際に大麻を使用したかの有無に関わらず、決定的証拠と共に逮捕されてしまう可能性が極めて高くなるのです。
  これを読んで「じゃあ最初からCBD製品なんて使わなきゃ良いじゃーん!」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし大事なのは、先の文章の「食べた認識があろうと無かろうと」の部分であって、例えば誰かが悪意を持って食品にそれを混ぜたとしても、口に入った以上は同じ事が起こり得るのです。
  勿論、これを読んでいる道徳意識の高くお上品な皆様におかれましてはそのような事をするとは微塵も思っておりませんが、しかし万が一大麻使用罪が施行され、かつ証拠となる基準が尿中THCの陽性判定だった場合、心の無い一部方々による「嫌がらせTHC混入」が行われる可能性は、決してゼロとは言えないでしょう。

大麻使用罪で誰でも逮捕!ディストピアの爆誕

 ところで、2020年の日本で「『違法成分であるDMT(N,N-ジメチルトリプタミン)は、薬物を摂取していないヒトの尿からも出る事がある』という事実を知らなかった検察官が、尿中にDMTがあったというだけで、その量を測定せずにうっかり人を逮捕起訴してしまい、それが体内由来の物か体外由来の物か誰も分からないまま裁判にもつれ込む」という珍事が起こりましたが、おそらく大麻使用罪が施行された場合、「大麻由来か、他者によるTHC混入由来か」で二番煎じの茶番劇が起こるかもしれません。
 THCの場合はDMTとは違い体内からは合成されないのですが、しかしTHCが尿から出たとして、その理由が大麻を使用したためなのか、それとも誰かにTHCを盛られたためなのか、現在の尿検査では見分ける事が出来ません。
故にもしそうなった場合、逮捕や裁判に多大な税金を費やしながら、THCを誰かに盛られた被害者を牢屋にブチ込んで未来を奪ったり、もしくは離婚調停が面倒くさいから食事にTHCを盛って伴侶を逮捕させたりといった、一寸先は逮捕のディストピア・ジャパンが爆誕しかねません。
「流石にそれは無いだろう」と思う方はきっと多いでしょう。個人的にもそう思いたいのですが、様々な時代や文化において、毒や薬という物は人の恨みを晴らしたり、欲望を叶えたりするために使われてきた歴史も多々あります。流石に人を傷付けたり殺したりする事は多くの人がためらう物ですが、しかし仮に対象の身体を傷付けず後遺症も残さないまま、社会的には終わりに出来る簡単な方法があるとしたら、一体何人がそれを手に取るでしょうか。
 人間の欲望や憎しみの心が持つ強さと残酷さは、法や倫理など時に簡単に超えてしまう事を、読者の皆様はきっとよくご存じかと思われます。
この雑誌が発刊された時にそうなっていない事を切に願っておりますが、はてさて……。

「知らんけど」で法律を作るな

 日本は海外と比べて、違法薬物の濫用が少ない国と言われています。「ダメ絶対」という標語は日本人のほとんどが一度は聞いた事があるでしょうし、街中で違法薬物を使い過ぎて倒れこんでいる人も見かけません。確かにそれは素晴らしい事ですが、一方でこの「ダメ絶対」という意識があまりにも強く、それに関する知識を得たり発信したりする事すらタブー視される傾向にあります。
 そしてどうやらそれは取り締まる側も同じであるようで、先の尿中DMTの件も今回の大麻使用罪についても、薬物問題については知識が圧倒的に不足したまま全てを「ダメ絶対」として規制している所がどうしても目立ちます。
 当たり前ですが、逮捕は人の人生を狂わせます。それこそ、違法薬物の使用そのものより、たった一回でも逮捕されて社会から弾き出される方が、社会制度の中で暮らす私達にとっては立ち直る事が難しいとさえ言えるでしょう。
 故に、人を罰する法律を作る際には殊更慎重にならなければなりません。あらゆる可能性を考慮し、それでも罰則を作り人々の行動を制限する事で、社会やそこに生きる人がより良く暮らせるかどうかを検討すべきであり、こんな雑誌に突っ込まれるような穴をなおざりにしたままダメ絶対的対応で済ませているのでは話にならないのです。
 天下の行政機関にお勤めされている方々ならば、それは素晴らしい学校をお出でになり、大変明晰な頭脳をお持ちでいらっしゃる事でしょう。そのような方々におかれましては、決して「ダメ絶対」の思考停止のまま蓋をする事無く、薬物を規制・管理するに値するだけの科学的、文化的知識を、せめて身につけて欲しいものです。

補足:この記事はあくまで大麻使用罪創設に伴う危険性を指摘した物であり、違法薬物の使用・製造を教唆する意図はございません。

参考文献
世界保健機関(WHO), カンナビジオール(CBD)事前審査報告書, 薬物依存に関する専門委員会(ECDD)第39回会議, 2017年11月6日〜10日

原文は「WHO Thirty-Ninth meeting of the Expert Committee on Drug Dependence」から観覧可能です。
WHO Thirty-Ninth meeting of the Expert Committee on Drug Dependence
https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/ecdd_39_meeting/en/

また、日本語訳した物を「日本臨床カンナビノイド学会」から観覧可能です。
日本臨床カンナビノイド学会
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=73799

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するめさんより一言:
 これは仮公開。本誌ではさらに踏み込んだ情報が盛り込まれます。

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青井より一言:
 さすがですね。大麻には疎いのでこの法改正案がこんなヤバいとは思ってもみませんでした。
 檻の中で聞いてきた最強の隠し方とか、作る方法の詳細とか、捕まらない方法とか、法廷での闘い方とか、他の犯罪を助長しないように気を付けて盛り込んでみたら大麻部族の方たちは盛り上がってくれるかもしれませんね。
 

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